はじめに
日本で不妊を心配したことのある夫婦は4組に1組。
実際に10組に1組は不妊症だといわれ、その数は140万組にものぼるといわれています。
不妊症の悩みを持つ人が増えてきた原因としては、結婚、妊娠、出産の高齢化、ストレス環境、環境ホルモンによる男女のホルモン状態の中性化などいくつもの原因が複雑に絡み合って現状があると考えられます。
そして西洋医学の進歩によってホルモン剤や排卵誘発剤による治療、人工授精、それでも妊娠しなければ、体外受精と治療のステップをあげていくという方法は、今や不妊治療のセオリーとなっています。
こういった治療を受けることで道が開けるカップルがいる一方で、先の見えない不安を抱いたり、どんどんステップアップする治療にとまどう人も多いはずです。
ここでもう一度だけ考えて欲しいことがあります。女性にとって、妊娠とはどういう意味を持つのでしょうか。そして、今本当に必要な治療を受けているでしょうか。
選択肢は他には全くないのでしょうか。
女性の体には、もともと「妊娠する力」「産む力」が備わっています。妊娠・出産は、いわば女性の本能です。その本能を守る働きのどこかに少し問題が生じ、うまく妊娠できないとしたら、まずは、その本能に影響を与える問題を取り除くことが大切なのではないでしょうか。
現代の不妊治療は、技術的には一昔前はとても考えられなかったような進歩を遂げています。
けれども妊娠する力、産む力が低下している体に、受精卵だけを与えても、体はうまく命を育むことができません。
「不妊」という状態にある体が、無事妊娠・出産するためには、体の内側に目を向ける必要があります。
まずは基本的な体作りをしていかなければ、いくら高度な生殖医療を受けたとしても、失敗を繰り返すことになりかねないのです。
この女性の基本的な体作りを漢方薬でサポートしていこうというのが、今回ご紹介する「漢方不妊療法」です。
女性が本来持っている月経のリズムを取り戻す方法なので、体に余計な負担をかけることはなく、むしろ今までより良い状態に体を導くことができるのが、漢方不妊療法の優れた点です。
漢方不妊療法は、不妊の原因が見つからない場合でも、子宮や卵巣に基質的な問題がある場合でも、西洋医学の治療を補佐する形で用いることができます。
また、ホルモン治療や体外受精を受ける前に、漢方薬で体作りをしておけば、成功率を高めることにもつながります。
そして体が整ってから妊娠すると、妊娠経過も順調で産後の肥立ちもよく、赤ちゃんも極めて元気、という点も大きなメリットといえるでしょう。
今月までに約700人以上の方が、当店の漢方薬を服用しながら妊娠されています。
赤ちゃんがほしいと思ったら、まずは一度ご相談下さい。
漢方不妊療法の原理(1) 補腎療法
〇腎の充実度が生殖能力を左右します。
妊娠するための必須条件は、月経期、卵胞期、排卵期、黄体期それぞれに起こる体やホルモンの分泌の変化が、順調であるということです。
月経周期が正常な状態を保つためには、体のエネルギーである気や、妊娠・出産と深い関わりのある血などが充実していて、めぐりも良く、さらに五臓(脾・肺・心・肝・腎)の働きがしっかりとしている必要があります。五臓のうちで、もっとも生殖能力と関係の深い腎(解剖医学からみた腎臓とは異なります)についてお話しします。 中医学では、「ホルモンバランスや卵子・卵胞の発育、成長は、腎がコントロールしている」という考え方があります。腎の中には、精という物質が蓄えられていて(腎精)、血や卵子、精子などはこの腎精から生じると考えられています。この精というものは少々わかりにくいかもしれませんが、「精がつく」「精根尽き果てる」「精を出す」などの言葉を思い浮かべれば、精の大切さはイメージできるのではないでしょうか。
この腎精については、二千年ほど前に書かれた中国の医学書である『皇帝内経』に「女性は7の倍数で変化する」と書かれています。14歳で初潮、49歳で閉経というリズムは、二千年たった現代でもそれほど変わっていません。科学が発達し、高度生殖医療の研究が進み、特殊な技術を使えばかなりの年齢まで出産が可能になりましたが、女性の体に備わっている自然の摂理は、そう大きくは変わっていないのです。
その腎精が芽吹くのがちょうど7歳のころ。歯が生え変わる、髪の量が増える、といった変化が体に起こります。そして7×2=14歳になると、生殖系統の発育が盛んになり、初潮が訪れます。7×3=21歳では、腎精が充実して、最も妊娠に適した時期に突入します。生殖能力と生命力がピークを迎えるのは、7×4=28歳のころ。7×5=35歳になると、衰えが始まります。まず、肌につやが無くなったり、髪が少なくなるなどの変化が起こり、生殖能力にも陰りが出てきます。
現代では35歳以上の出産を高齢出産と呼びますが、このことから考えても、人生のひとつの節目ともいえる時期です。そして42歳を迎えるころには白髪も出始め、49歳では腎精が更に衰えて、閉経する、というのが、中医学からみた女性のバイオリズムなのです。
生殖能力も含め、体全体の新陳代謝をコントロールする腎精は、生命力そのものといえる存在です。赤ちゃんはこの腎精をお父さんから半分、お母さんから半分もらって、ひとつの命が誕生すると考えられています。そしてその腎精の運搬をしているのが精子や卵子なのです。
こう考えると西洋医学でいう「卵子の老化とは」、中医学でいう「腎精不足」という状態に当たると考えられます。そして先ほどの7の倍数で変化していく腎精の変化は、まさに卵子の老化していくグラフにぴったりと一致します。最近になって盛んにいわれている「卵子の老化」は、中医学では二千年も前から記述されているのです。
そしてこの腎精を補充して、腎(子宮や卵巣)の若返りを図っていくのが『補腎薬』であり、『補腎療法』です。つまり大切なのは実年齢よりも「腎年齢」、つまり、子宮や卵巣などの生殖機能がどれだけ若さを維持しているかなのです。
漢方不妊療法の原理(2)
〇温陽活血法でフカフカで暖かい内膜作りを
体外受精や顕微授精を繰り返し行っているのに、なかなかよい結果につながらないというかたがたの中には、卵子の質にはまったく問題なく、きちんと受精している。でも受精卵を子宮に移植すると着床できない。着床しても、その後卵が育たないというケースがあります。これらの原因の一つに、子宮内膜が薄いという問題があると思います。
一般的に、子宮内膜の厚さが10㎜以上あると、内膜が6~7㎜ぐらいしかない場合よりも、体外受精の成功率が約3倍高いといわれています。受精卵が着床し、しっかりと育てていくためには、やわらかくてあたたかい、ふかふかとしたベッドのような、厚みのある子宮内膜が必要です。
では実際に子宮内膜をやわらかく、ふかふかにするためには、どうすればよいのでしょうか。
東洋医学的には、子宮の血の流れをよくし、子宮をあたため、たまっている汚れた古い血(瘀血)をとり除くことを考えます(温陽活血)。そして受精卵がうまく着床し、育つためには、植物を根づかせ育てる大地のように、子宮がみずみずしくうるおっていることも大切です。
たとえばチョコレートなどの甘いものは、子宮内に瘀血として滞り、さらに子宮からうるおいを奪う心配があります。子宮に古い血をためず、いつもみずみずしくうるおった状態にするためには、甘いものを控え、トマトやピーマンなどの緑黄色野菜を食べるとよいでしょう。
「乾いた子宮にうるおいを与えるなら、水分をとればいいのでは?」と考えるかもしれませんが、それはNG。水やお茶などの水分をとりすぎると、体内に余分な水分がたまって(=水毒)、体が冷えてしまいます。その点、緑黄色野菜には利尿作用のあるカリウムが含まれているので、体内に水分がたまりすぎる心配はありません。適度な運動をして、血液の循環をよくすることも大事です。
「畑の土とお母さんの子宮、どちらもうるおいが大事!」
夏の畑のいちばんの敵は“日照り”です。長引く日照りは、大地から水分や栄養分を奪い、薬草たちを枯れさせてしまいます。また、うるおいのない大地には、新しい種子や苗は根づきません。だから、われわれ畑の主治医は、畑に水をまいたり、わらを敷いたりして、種や苗を育てる大事な土を日照りから守るのです。同じことが、赤ちゃんをはぐくむ子宮にもいえるでしょう。もし子宮の中が日照りの大地のように、カサカサと乾いていたら、せっかく移植された受精卵も根づく=着床することはないでしょう。もしなんとか着床できたとしても、栄養となる水や血液が十分でない乾いた状態では、受精卵が元気に育っていくことはむずかしいでしょう。
高齢、冷え性、ストレスや疲労、また、不妊治療で排卵誘発剤を長期服用するなどで、子宮内膜は薄くなります。子宮内膜を厚くするためには、こうした要因をできるだけ避けること。そして、日照りの大地に水をまくように、みずみずしい緑黄色野菜をしっかりととって、体や子宮をうるおし、血行をよくするよう心がけましょう。
【中国漢方による】 新不妊症周期療法
補腎療法と温陽活血薬を生理周期に合わせて服用する「周期療法」
月経のリズムを大きく月経期、卵胞期、排卵期、黄体期という4つの時期に分け、それぞれの時期の体の状態に合わせて、補腎と温陽活血の漢方薬を飲み分けるというのが、周期療法の基本です。生理不順が顕著な方で、卵巣機能の回復が比較的早いことが期待できます。
不妊症周期療法の原理
低温期 | 排卵期 | 高温期 | 月経期 |
---|---|---|---|
月経後1~12日目 新しい子宮内膜や、成熟した卵胞をつくる為に、潤いや血液を補う漢方薬を用いる。 |
月経後12~16日目 卵子を排出し、黄体に変化するのを助ける漢方薬を用いる(加えて子宮に卵子を運ぶ為の薬を併用することも) |
月経後16~28日目 赤ちゃんのベットとなる内膜を良い状態に保てるよう、新鮮な血液を蓄え、体温を高める働きをする漢方薬を用いる。 |
不要になった子宮内膜や経血を体外にすべて排出する為の漢方薬を用いる。 |
赤ちゃんが欲しいと思ったら・・・【中国漢方で体質改善】
●女性の不妊症を始め、流産癖、男性不妊、産中産後の体調不良でお悩みの方、人工授精、体外受精を予定されている方、子宮内膜症、子宮筋腫の方、ご相談下さい。
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