めまいと不安感
メンタル疾患と漢方薬
めまいはありふれたもので、日常生活の中でも体験する事が多い症状です。
健常人でも、「地震かな」と周囲のヒトに尋ねた経験もあると思います。
めまいを定義すると、安静にしている時あるいは運動中に、自分自身の体と周囲の空間との相互関係・位置関係が乱れていると感じ、不快感を伴ったときに生じる症状とされています。
一般的には自分自身か、または周囲が動いていないのに動いているという違和感のあるあやまった運動感覚を感じているときに、めまいがあると訴えることが多いようです。
具体的にはぐるぐるまわる感じ、ふわふわまたはゆらゆらする感じなどで訴えられます。
一概にめまいと言っても、実際にはその原因は様々です。
人間の脳は内耳の前庭(三半規管や耳石器)からの情報、目からの視覚情報、筋肉や関節から入る体の重心のバランス情報(体性感覚)を統合して姿勢の維持、平衡感覚をとっています。
これらのどの部位が障害されても、脳へ誤った情報が伝えられ、めまいという症状が起こりうる訳です。
回転性の激しいめまいや嘔気を伴うめまいでは、眼振という自発的な目の動きがみられる事も多くあります。
このようなめまいは内耳性のめまいであることが多く、聴力障害、耳閉感や耳鳴が随伴する事もあります。
また、同様なめまいのなかで、手足のしびれ、ろれつが回らない、麻痺、強い頭痛などが伴う場合は、脳出血や脳梗塞の可能性も否定できません。
その他、めまいという症状の中には、意識障害や眼の前が真っ暗になるという症状が伴っている場合があります。
このような場合は、一過性の脳虚血障害が考えられます。
若年者でたちくらみ症状が強い場合は起立性低血圧症などが多く、高齢者で頸部の動き(伸展、屈曲)によって生じるような場合、椎骨脳底動脈循環不全症などが考えられます。
漢方では、揺れ動くような症状を「風(ふう)」と呼び、体内の変化が原因で発生する場合は「内風(ないふう)」と呼びます。
この場合、風を取り去ると同時に、風が発生する原因を解消していきます。
また、動作時にクラッとしたり、頭がボーッとして目がくらみ倒れそうな気がするといった、軽度のめまいは、頭部に栄養や循環が十分でないために生じることが多く、漢方ではこれを「清陽不昇(せいようふしょう)」と呼びます。
この場合は、頭部の栄養や循環が改善に向かうように手助けをしてあげます。
漢方薬としては以下のタイプに分けて治療します。
①風痰上擾タイプ
特徴:回転性のめまい・普段から食欲不振がある・舌の苔がべったりしている
処方:半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
②肝陽化風タイプ
特徴:頭痛を伴う・イライラしがち・のぼせがち
処方:釣藤散(ちょうとうさん)
③水飲阻滞タイプ
特徴:間欠的なめまいやふらつき感・水分を取りすぎている・冷えを感じやすい
処方:苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
④血虚タイプ
特徴:立ちくらみ・頭がぼんやりする・顔色が悪い
処方:当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
⑤オ血阻滞タイプ
特徴:頭痛や肩こりがある・頭が重い・あざやシミ、クマができやすい
処方:冠心逐オ丹(かんしんちくおたん)
⑥気滞タイプ
特徴:動くとふらつく・気分がふさいでいる・胸がつまる
処方:半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
めまいの食養生
めまいを改善する為、積極的に摂取したい食べ物は、以下の通りです。
① ストレスに対抗するビタミンB群を多く含む食べ物
貝類、さんま、たらこ、牛肉・鶏肉・豚肉のレバー、豚ヒレ肉、ボンレスハム、たらこ、うなぎ、 納豆、うずら卵、牛肉・鶏肉・豚肉のレバー
② 脳をリラックスさせるGABAを多く含む食べ物
発芽玄米、納豆やキムチなどの発酵食品
③ 不安感を抑え、抑うつ感を軽くしてくれるトリプトファンを多く含む食べ物
かつお、まぐろ、赤味の肉、納豆
④トリプトファンの合成を促進するビタミンDを多く含む食べ物
鮭、かれい、うなぎ、さんま、バナナ
なかなか良くならないめまいも、体質と病状に合わせた漢方薬で多くの方が改善されています。まためまいに効く温灸法も指導させていただきます。めまいでお悩みの方、しっかりとした体質チェックと選薬の出来る当店にご相談ください。