視力の低下 眼精疲労
その他の病気と漢方薬
視力の低下 眼精疲労
視力はどうして悪くなるのかと言えば、当たり前ですが寝るとき以外は一日中酷使されているからです。日本人は平均的に視力が弱いといわれていて、ライフスタイルにその原因を見ることができます。
その大きな要因として「近くを見続ける」、「ストレス」、「明暗の差」と言ったことが指摘されています。
近くを見続けるというのは、いわゆる携帯電話やパソコンなどが欠かせなくなり、手元の小さな画面を見続けることが増えているからであると言われています。このようになると、集中して近くを見る他、まばたきの回数が減るため目が乾き、様々な目の疲れの原因となってしまいます。
そして、現代人に多いストレスですが、目にまで影響があります。ストレスは肉体にかかっているものと精神的なものに分けられ、肉体的なストレスは脳に届く血液が少なくなって栄養分や酸素の供給を妨げて目の疲労を大きくします。また、精神的なストレスは、自律神経の働きを悪くしてしまって、精神的な要素から目が極端に見えなくなることがあります。
明暗の差については、暗い場所での読書やゲームといった行為によって起こるものです。目というのは、明暗を調節している虹彩筋が閉じたり開いたりして光が目に入る量を調整しますが、明暗の変化が激しいとその分忙しく働くことになり、そのため、眼が疲労して視力低下を起こしてしまうのです。
こういった理由が視力の低下原因なのですが、どれも目に対して疲労が蓄積する要因になりますから、できるだけ目を使ったら休ませるといったことが大切です。
現在、日本人の失明原因の第一位は緑内障と言われるもので、この原因は強度の近視だと考えられています。近年は網膜剥離も増えているのですが、これもまた強度の近視が原因になっていて、こうした眼病は、症状が進行することによって失明にまで至ります。
視力の低下が直接の失明原因になるわけではないですが、視力が低下したことによって眼病を引き起こし、結果的に失明に至らせることがあることは知っていた方が良いでしょう。
視力の低下、眼精疲労によい漢方薬
目の疲れや症状は、「肝」の不調から
目の疲労感や乾きといったさまざまな症状は、五臓六腑との密接な関わりの中で現れるもの。中医学(中国漢方)の医学書にも「目には五臓六腑の精気(生命の源となる力が)集まり、その力によって物をよく見ることができる」という記述があり、その密接な関係を表しています。
特に深い関わりがあるのは、血の貯蔵庫である「肝」。「肝は目に開く」ともいわれ、肝で蓄えられた血は”目の栄養源“となっています。目を使うと血は消耗されますが、酷使して血の消耗が激しくなると、目に栄養が行き届かず疲れや痛みなどの症状が現れるのです。
また「肝腎同源」といわれるように、「腎」は肝をバックアップする臓腑。肝の機能を高めるためには、腎を強くすることも大切です。
眼精疲労やドライアイといった目のトラブルは、多くの人が抱える悩み。軽い目の疲れでも、頭痛や肩こり、イライラ、鬱といった症状につながることもあります。また、肝臓や胃腸などの病気が原因になっていたり、糖尿病などの初期症状として現れることもあるので、いずれにせよ軽く考えて放置するのは禁物。日頃の養生で目をいたわり、症状に気付いたら早めに対応するよう心がけましょう。
漢方薬としては以下のタイプに分けて治療します。
①肝血虚(かんけっきょ)タイプ
目の使い過ぎで血を消耗したり、月経や出産、病気などで血が必要以上に失われたりすると肝に蓄えられる血の量が不足する「肝血虚」の状態に。また、先天的な虚弱体質、ストレスや心身の疲労、胃腸障害、過度なダイエットなども血の不足につながります。
血が不足すると目に充分な栄養が行き届かず、視力の低下、目の疲労、乾燥といった症状が現れます。また、めまい、手足のしびれや冷え、不眠、顔色にツヤがない、月経不順、髪が乾燥してパサつく、髪が薄くなる、爪がもろいなどの症状を伴います。女性に多く見られる症状で、特に生理時には強く症状を感じることもあります。
このタイプの養生は、まず肝を補って機能を高めることが大切です。血を増やして流れをなめらかにし、目に充分な栄養を与えるようにしましょう。
食の養生としては、ぶとう、レーズン、ブルーベリー、クコの実、なつめ、レバー、にんじん、ほうれん草など。
漢方薬としては婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)が良いでしょう。
②肝鬱(かんうつ)タイプ
ストレスが溜まったり、イライラやうつ気分が続いたり。そんな精神トラブルを抱えていると、全身に栄養を運び、老廃物を回収する肝の機能が低下し、気のめぐりが滞ってしまいます。その結果、目に精気が送られなくなり、目の痛みや疲れやすさ、視力の低下といった症状が現れます。
精神的なストレスが強くなるほど、目の症状も強くなるのが特徴で、目の症状のほか、頭痛や肩こり、イライラ、不眠、不安感、月経痛、月経不順といった症状を伴います。
肝鬱タイプの養生は、肝を養い、ストレスを発散することで肝の機能を回復するのが基本。ストレスやイライラを感じやすい人は、うまく発散して溜め込まないように心がけましょう。
食養生としては、ハマナスの花茶、ジャスミン茶、桑の葉茶、緑茶、ハブ茶、ハッカ、あわび、さざえ、あさりなど。
漢方薬としては逍遥散(しょうようさん)や開気丸(かいきがん)、睛明丹(せいめいたん)が良いでしょう。
③肝腎陰虚(かんじんいんきょ)タイプ
慢性病や老化、長引く肝血虚の状態などが原因で、肝と腎の陰液(体液)が消耗しているタイプ。白内障などの目の病気にかかりやすくなり、目の疲労感やかすみ、視力の低下など、眼精疲労の症状がはっきり現れるのも特徴です。
それに伴って、腰痛や耳鳴り、難聴、物忘れ、手足のほてり、口の渇きといった症状が現れます。
肝と腎は「肝腎同源」といわれるほど密接な関係にあります。肝は腎に養われていて、肝の機能を回復するためには、腎も強くしなければなりません。そのため、肝腎陰虚タイプの養生では、肝と腎両方の陰液を補いながら、機能を高めます。
食養生としては、ごま、くるみ、松の実、桑の実、山芋、羊のレバー、ウナギの肝など。
漢方薬としては滋腎明目湯(じじんめいもくとう)や杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)が良いでしょう。
④血熱(けつねつ)タイプ
①~③の体質を持った人が、目の炎症症状を発症した場合で、熱(炎症)によって目の充血、腫れ、痛みがある場合です。
近年コンタクトレンズの使用者が急増して、間違った使い方で目に負担をかけてしまうケースが増えています。また、長時間のパソコン作業が欠かせなくなった現代人は、知らず知らずのうちに目を酷使して、目の疲れ、乾燥、炎症から充血することが多くなっています。また、花粉症や目のアレルギーの場合の充血もこのタイプです。
漢方薬としては洗肝明目湯(せんかんめいもくとう)が適応します。
視力を回復させるためによい栄養素もわかってきていて、青背の魚に含まれる「DHA」やブルーベリーに含まれる「アントシアニン」、菊の花のお茶(菊花茶)などが目の機能に効果的であると言われています。視力を下げるもとを生活の中から取り除きつつ、視力をよくする栄養素を積極的に摂取するのが良さそうです。
なかなか良くならない目の悩みも、体質と病状に合わせた漢方薬で本当に楽になります。しっかりとした体質チェックと選薬の出来る当店にご相談ください。