子どもの発達障害
メンタル疾患と漢方薬
子どもの発達障害
発達障害は、主に広汎性発達障害、ADHD(注意欠如・多動性障害)、学習障害(LD)、知的障害の総称です。疫学調査では、文部科学省が2012年に実施した全国調査の結果で、教室での指導で何らかの困難を伴う子どもさん(発達障害の可能性のある子どもさん)の割合は、6.5%でした。 この調査の結果によると1クラスに2~3人のお子さんが発達障害傾向を持っていることがわかります。
それでは、広汎性発達障害、ADHD、学習障害、知的障害についてそれぞれご説明したいと思います。
広汎性発達障害(PDD)は、自閉症やアスペルガー症候群、特定不能の広汎性発達障害などが含まれますが、社会性の障害、コミュニケーションの障害、こだわりの3つ組の障害と言われています。
具体的な症状は、視線が合いにくい、うなずいたり、愛想笑いのような仕草や表情が少ない、雰囲気や空気が読めない、冗談がわからない、特定の物を徹底的に集める、あることへの知識が深く、「博士」と呼ばれているなどが挙げられます。
次にADHD(注意欠如・多動性障害)は、発達に不相応な著しい不注意、多動、衝動性を特徴とする行動の障害です。
具体的な症状は、忘れ物が絶えない、裏表のプリントで裏を忘れるなど、不注意なミスを繰り返す、じっと座っていられない、順番を待てない、つい手がでてしまう、何か気になることがあれば、すぐに行動するなどが挙げられます。
LD(学習障害)は、知的水準から期待されるより十分に、読む・書く・計算する能力が低い場合にLD(学習障害)の診断がなされます。
最後に知的障害ですが、知的機能が平均よりも低く、社会的・概念的・実用的な適応機能に制約がある状態です。染色体異常や先天性感染症など原因がわかっているものもありますが、多くは原因不明です。
子どもの発達障害と漢方薬
子どもの発達障害に対して根本治療となる漢方薬はありません。そのほとんどが先天性ですのであくまで周辺症状の緩和が目的となります。
漢方医学では、さまざまな神経症状・身体症状は身体に流れる「気」の乱れが原因で発生すると考えられています。漢方薬はその気の流れを調整するもので、心と身体のバランスを整える効果があると言われています。
発達障害の子どもに処方されている主な漢方薬は、「抑肝散(よくかんさん)」「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」など。子どもに精神安定剤を飲ませたくない・副作用が気になる、という方に選ばれています
抑肝散:神経の高ぶりを抑え、イライラ・不眠などの精神症状を抑制。筋肉の緊張を緩める効果もあるため、けいれん・手足の震え・夜泣き・ひきつけなどにも適応します。
抑肝散加陳皮半夏:抑肝散と効能はほぼ同じですが、胃腸にやさしく、長期連用が可能です。
柴胡加竜骨牡蠣湯: 神経の興奮を鎮めて不安定なメンタルを整える精神安定作用を持っており、発達障害のパニック・不安・不眠・チックなどの症状緩和に用いられています。
便秘傾向があって、体質的にも丈夫な子どもに適しています。
発作的な感情の高ぶりやパニック症状には、甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)や敬震丹(けいしんたん)を頓服させると症状が和らぎます。