胃炎
その他の病気と漢方薬
胃は消化管の中で最も内腔が広く、壁も厚い臓器で、空腹時はしぼんでいますが、食べ物が入ると1.5~2.5リットルの大きさになります。胃粘膜には胃液を分泌する無数の分泌腺があり、1日に約2リットルの胃液が分泌されます。胃の働きはおもに次の3つ。
1.食べた物を一時、蓄える。
2.ぜん動運動と胃液の働きにより、食べた物を消化しやすいよう、粥状にする。
3.食べた物と一緒に入り込んだ細菌を胃酸で殺菌する。
また、消化酵素の働きでタンパク質を消化したり、アルコールの一部は胃粘膜から吸収されます。
胃炎とは何らかの原因で胃粘膜に炎症が起こり、傷ついた状態をいいます。胃炎には急性胃炎と慢性胃炎があります。
例えば、お酒を飲み過ぎた後、胃が刺すように痛んだり嘔吐するなど、突然、激しい症状を起こすのが急性胃炎です。胃が乱暴な扱いを受けたときに胃が発する注意信号といえるでしょう。おもな症状は次の通り。
1.みぞおちのあたりがキリキリと刺すように痛む。
2.吐き気、嘔吐。
3.急激に起こるが、一過性のもので通常は2〜3日で回復する。
一方、いつもあるわけではないが、なんとなく胃の調子が悪いというのが慢性胃炎の特徴です。おもな症状は胃もたれ・食欲不振・吐き気・胃痛・腹部膨満感・げっぷ。
胃炎の漢方治療
急性胃炎の場合は殆どが暴飲暴食によるもので、この場合は基本的には胃を休ませる様にすれば2~3日で症状は改善します。もちろん漢方薬も一緒に服用するとなお効果的です。用いる漢方薬は平胃散(へいいさん)、大柴胡湯(だいさいことう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)などが挙げられます。これらの処方は胃腸は丈夫ですが食べ過ぎや飲み過ぎのために急性胃炎を起こしている場合に用いられます。
一方元々胃腸が弱い人で胃腸を壊し急性胃炎になっている場合は、香砂養胃湯(こうしゃよういとう)、人参湯(にんじんとう)、六君子湯(りっくんしとう)等を選択します。
慢性胃炎の治療の場合も胃腸が丈夫な人と虚弱な人に分けて考える必要があります。胃腸が丈夫な人が慢性胃炎に陥っている場合は食事の不摂生、ストレス過多、過度の疲労蓄積などが考えられます。食事の不摂生による慢性胃炎の場合は急性胃炎と同じく平胃散、大柴胡湯、半夏瀉心湯などが適応します。ストレス過多による慢性胃炎の場合は四逆散、柴胡桂枝湯、大柴胡湯など柴胡を含む処方を選択する機会が多くなります。疲労の過度の蓄積の場合は清暑益気湯(せいしょえっきとう)や補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を用います。
胃腸の虚弱な人は疲れやすく、疲れると食欲もさらに低下します。このような場合には清暑益気湯あるいは補中益気湯などを用い元気を出させるようにします。その他胸やけの強い場合は牡蛎(ぼれい)や山梔子(さんしし)加えて用います。
胃炎の食養生
胃炎の場合1番重要なことは、当たり前のことですが消化の良いもの、加熱調理したものを基本にして、生ものや刺激物は控えましょう。
食材としては、シソ、大根、大根の葉、長いも、ショウガ、なつめ、梅干しなど