梅雨時の湿邪対策に漢方を!
季節の病気と漢方薬
梅雨から夏にかけて湿度が高くなり、高温・多湿(湿邪)に悩まされる日が多くなります。湿邪は様々な形で体に不調をもたらします。今回は湿邪による代表的な不調とその対策についてご紹介いたします。
1.脾胃(胃腸)の不調に加味平胃散(かみへいいさん)や香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)
湿邪による不調の代表的なもののひとつが脾胃の不調です。湿邪が盛んになると食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢などの症状を起こしやすくなります。夏場はその暑さゆえに冷たい飲み物を摂取することが多くなり、脾胃に更に負担をかけてしまいがちです。また刺身などの生ものの摂取も、湿邪による脾胃の不調を悪化させます。
このような湿邪による脾胃の不調を改善するには、原因である湿邪を取り除く必要があります。特に吐き気、嘔吐、下痢が目立つような場合に有用な処方が加味平胃散(かみへいいさん)です。ベースになっているのが平胃散で脾胃の湿邪をしっかり取り除き、吐き気、嘔吐、下痢などを改善します。さらに神麹(しんぎく)、麦芽(ばくが)、山査子(さんざし)といった消導薬(消化を促進し、未消化物を除く薬)を加えているので、弱った脾胃の機能をフォローする働きも持ち、脾胃の症状を改善する作用を高めています。
また、湿邪の影響により脾胃気虚(消化機能の低下)が進み、食欲不振や倦怠感が目立つような場合は、香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)がお勧めです。ベースになる六君子湯が脾胃を補い、香附子(こうぶし)、縮砂(しゅくしゃ)、霍香(かっこう)が悪化要因である湿邪にも対応するので、湿邪により脾胃気虚が進んだものにも大変有効です。
2.湿邪によるカゼに霍香正気散(かっこうしょうきさん)
この時期は湿邪の侵入によるカゼも多発します。寒気、発熱などの風邪による通常の症状に加えて、体や頭が「重く痛い」という特有の症状を伴います。また食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢などの胃腸症状を同時に発症するのも特徴です。
このような湿邪によるカゼには、葛根湯や麻黄湯のような代表的なカゼ処方があまり適応しません。このようなケースにおすすめなのが霍香正気散(かっこうしょうきさん)です。主薬の霍香を中心に全身の湿邪を取り除き、気を巡らせます。そのため湿邪によるカゼ症状と胃腸の症状を一剤で改善することができます。また、熱の症状が強い場合は霍香正気散に猪苓湯(ちょれいとう)を併用すると、有用な組み合わせとなります。
3.めまいに沢瀉湯(たくしゃとう)
湿邪が盛んになると、めまいを起こしたり増悪させたりすることも多くなります。湿邪の影響によって脾胃(胃腸)に水が溜まりやすくなり、それが頭部に影響していると考えられます。このような湿邪・水滞が関与するめまいには沢瀉湯(たくしゃとう)がおすすめです。沢瀉(たくしゃ)と白朮(びゃくじゅつ)の二味から構成されるシンプルな処方で、めまいによく使われる苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)や半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)と比べても切れ味が良く、より重度のめまいにも効果があります。


