子宮内膜症
女性のための漢方薬
ひと言でいうと、「月経が子宮の中以外で起こる」ことです。子宮の内側には、生理機能を営む膜「子宮内膜」があります。妊娠すれば、そこに受精卵が着床し、胎児―胎盤系を形成します。妊娠しなければ、その膜ははげ落ちて、外に出血として出ていきます。これがすなわち、月経(生理)です。
生理の1日目に、子宮内腔ははげ落ちた内膜で、内圧が上がります。その圧力で月経血は外へ出ようとしますが、下方は狭くて十分出ることができません。そこで、抵抗の少ない卵管を伝って腹腔(ふくくう)内へと逆流します。したがって、生理中にお腹の中(主に骨盤の中)には子宮内膜を含んだ血液が溜まっています。血液が骨盤内の子宮の後ろに溜まれば、直腸を刺激し、便が出やすくなります。普段、便秘気味の女性は、生理中は便が出やすいのはこのためです。便通が規則正しい方は、むしろ柔らかくなって下痢になる人もいるでしょう。生理中は骨盤腹膜炎の状態になります。それで、お腹、または腰が痛い、あるいはだるくなるのです。
逆流した月経血の中には、まだ生きた内膜細胞がいます。この内膜細胞は、ダグラス窩(か)、腹膜 (子宮後方と直腸との間)、卵巣、骨盤外腹膜、卵管、腸などの腹腔内のあらゆる所にくっつきます。もし生着してしまうと、そこで内膜細胞は生命活動を開始します。すなわち、子宮の内側にある内膜細胞が、子宮の内腔以外の場所で増えていくことになります。それで、「子宮内膜症」と呼びます。
子宮内と違って、お腹の中の血は逃げ場がありませんから、古くなるとドロドロになって骨盤内の臓器どうしを癒着させます。直腸が他の臓器と癒着すれば、排便痛が出現します。卵管が他の臓器と癒着すれば、不妊症の原因にもなります。卵巣内に月経血が貯留すると、卵巣内に古い血液がドロドロになりチョコレート嚢胞とも呼ばれます。子宮の平滑筋層内に生着すると子宮腺筋症と呼ばれます。
子宮内膜症では次のような症状がみられます。
月経痛 月経時以外の下腹部痛 腰痛 性交痛 不妊 月経過多 排便痛
吐き気・嘔吐 不正出血 など
ただし、子宮内膜症であってもほとんど自覚症状のない人もいます。また、症状の程度と病気の進行は必ずしも一致しません。
子宮内膜症の漢方治療としては以下のタイプに分けて治療します。
1.寒凝血おタイプ
症状:冷え性が強く、生理が1週間以上または十日以上続き、出る量が少なく、だらだらする、固まりがあり、お腹の痛みがある、舌の色が紫色または黒い斑点がある。
漢方薬:キュウ帰調血飲第一加減
2.気滞血おタイプ
症状:ストレスが強い人に多く、イライラ、うつ感、生理前の体調不良(PMS)、胸や下腹部の脹り、生理周期が不安定など
漢方薬:冠心逐オ丹 血府逐オ丸
3.湿熱タイプ
症状:高脂肪食や甘いものが好きで、肥満傾向。どちらかというと暑がりで多汗傾向。生理前や生理中に下腹部が熱感脹痛または刺すような痛み。生理血色が暗紅、黄色いおりものがある、時々微熱が出る、尿が濃いなど
漢方薬:竜胆瀉肝湯合逍遥散、竜胆瀉肝湯合桂枝茯苓丸
子宮内膜症によい主な食材
いわし、さんま、さばなどの背の青い魚、玉ねぎ、ねぎ、しょうが、にんにく、紅花、サフラン、うこん、シナモンなど。