腰痛
痛みの漢方薬
腰痛について
人間の持病と言っていいのが、腰痛や膝痛です。というのも、進化の過程で2本の足で歩くようになった人類は、上半身の重さをすべて背骨や腹筋、背筋などが支えています。そのために、長時間同じ姿勢を続けていたりすると腰や膝に疲労が蓄積し、痛みが出やすいのです。
また、骨や筋肉は年齢と共に弱くなっていきますから、骨粗鬆症や椎間板ヘルニア、変形性膝関節症など、腰痛や膝痛の原因になる病気も増えてきます。こうした病気を防ぐためにも、日頃から骨や筋肉を強化しておきたいものです。
また腰痛は気候条件の影響を受けやすいものです。特に冷えと湿気が痛みの原因になるため、秋から冬にかけて悪化することが多いようです。
中医学の腰痛対策は、正気(抵抗力)を強め、体全体の機能を高めることで痛みの改善をはかります。正気が体内に充実していれば、邪気を追い払うことができるという考え方です。
古来「腰は腎の府」と言う言い方があるように、腰は腎(生殖・泌尿生殖器・造血機能・骨の代謝などを含めた概念の総称)に密接に関係している(腎は骨をつかさどるといわれます)ため、腎の衰え(腎虚)は腰痛となって現れやすいと考えます。従って腰痛の改善には、腎の強化と、気血を補うことで体全体の正気を高める治療が欠かせません。
中国では、腰痛及び下半身の関節の痛みには、独歩丸(どっぽがん・独活寄生湯 どっかつきせいとう)がよく使われます。独活(どっかつ)・防風(ぼうふう)・細辛(さいしん)には消炎鎮痛効果が、杜仲(とちゅう)・桑寄生(そうきせい)には腎を補い、腰・膝・骨・筋を強める作用があり、更には気を補う人参・白朮(びゃくじゅつ)、血を補う当帰(とうき)、地黄(じおう)、川弓(せんきゅう)などの生薬も配合されています。この処方ならではの「体力増強+消炎鎮痛効果」は、慢性の腰痛・関節痛・坐骨神経痛などに効果を上げています。
この独活寄生湯と対をなす腰痛の二大処方と言われるのが疎経活血湯(そけいかっけつとう)です。疎経活血湯は独活寄生湯と比べると急性期~亜急性期に対応できて、痛みがかなり強い場合はこの処方が適応します。
この二大処方に冷えが強い場合は桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、痛みが強い場合は鎮痛作用のある芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)や松康泉(しょうこうせん)、田七人参(でんしちにんじん)などを配合します。
また、これら漢方薬と温灸を併用することで、即効性も期待できます。
腎の働きを高めて、腰痛や膝痛に有効な食材としては、かき、いか、えび、くらげ、うなぎ、どじょうなどがあります。特に牛や豚の筋はおすすめです。豊富に含まれるコラーゲンは、硬い繊維状のタンパク質で、加熱すると柔らかいゼラチン状になります。食養生では「牛の筋をもって補う」として、腰痛に最もよく使われる食材です。
なかなか良くならない腰痛も、体質と病状に合わせた漢方薬で本当に楽になります。また温灸法も指導させていただきます。腰痛でお悩みの方、しっかりとした体質チェックと選薬の出来る当店にご相談ください。