男性更年期
メンタル疾患と漢方薬
更年期というのは、老化とともに性ホルモンの分泌が少なくなってくる期間のことをいい、ちょうど青年期から老齢期に移り変わる間の状態のことをいいます。
女性の場合には、閉経に伴いエストロゲンという女性ホルモンの分泌が少なくなる期間を更年期といいます。
一方で、男性の場合には、加齢とともに、テストステロンという男性ホルモンの分泌が少なくなる期間のことを更年期といいます。意外に思われるかもしれませんが、更年期は女性だけではなく男性にもあるのです。
エストロゲンやテストステロンといった性ホルモンは、人の体の調子を整えるのに欠かせない「自律神経」をコントロールする役割を果たしています。
ところが、更年期に入ってエストロゲンやテストステロンが急激に減少すると、自律神経の調子も大きく変化してしまい、結果として、自律神経失調症に似た不快感等を覚えることになるのです。
ところで、更年期という言葉は一定の年齢を指す言葉ではありません。更年期になるタイミングは個人差が大きく30代から更年期の症状がでる人もいれば、50代くらいではじめて更年期の症状が出る人もいます。年齢だけで更年期とか更年期でない、とかの判断はできませんので注意が必要です。
男性の更年期障害の原因には、下記のようなものがあります。
1.加齢による男性ホルモン(テストステロン)の減少
2.ストレスによる男性ホルモン(テストステロン)の減少
3.運動不足による男性ホルモン(テストステロン)の減少
このうち、一番大きな要因が1番目の「加齢による男性ホルモン(テストステロン)の減少」です。
男性ホルモン(テストステロン)は、青年期には体内で多量に生成されますが、年を取るに従い減少していきます。
男性ホルモンの分泌量には、ストレスや運動といった要因もかかわってくることが知られており、過剰なストレスがかかっている人、運動不足な人の場合には、男性ホルモン(テストステロン)の分泌が減少しがちであることが知られています。そのため、過剰なストレスがかかったり、運動不足の男性の場合には、男性の更年期障害が生じる割合が高くなってしまうのです。
男性の更年期障害の症状は多岐にわたります。男性の更年期障害の症状を列挙すると下記のようになります。
身体的症状:ほてり、のぼせ、冷え性、動悸、肩こり、頭痛、全身倦怠感
精神的症状:不眠、うつ症状、食欲不振
泌尿器系症状:頻尿、残尿感、会陰部不快感
性機能症状:性欲減退、勃起不全(ED)
男性更年期障害の漢方
大きく分けると4つに分けられます。
① 腎精不足
男性の場合、腎精は8の倍数で節目があると漢方では考えられています。8×5=40歳頃から毛髪が抜け初め、白髪も多くなって来ます。このあたりから「「腎精不足」の兆候が現れ、男性更年期障害の症状も現れてきます。「腎精」は、8×8=64歳まで、減少をし続けます。房事過多(セックスのし過ぎ)や過度の疲労がある場合は、この年齢よりも早く「腎精不足」が現れる事も有ります。
漢方薬:鹿茸大補湯 海馬補腎丸 知柏壮健丸 至宝三鞭丸
食養生:えび うなぎ 牛肉(赤身)羊肉 もち米 にんにく くるみ ざくろ など
② 気血不足
脾は後天の本と言い、気や血を作り出す源になります。何らかの原因で脾胃(消化器系)が虚すと「気」や「血」の生成が出来なくなり「気血不足」を起こします。これらが起こると「気虚」や「血虚」の症状が現れ、やる気が無くなったり、めまいや不眠・動悸などの症状も現れます。
漢方薬:補中益気湯 十全大補湯 帰脾湯 人参養栄湯
食養生:長いも 大和いも ねぎ 玉ねぎ 豆類 きのこ類 朝鮮人参など
③ 肝気鬱結
肝の疎泄が乱れることで、日常にうけるストレスを上手く処理できなくなります。または、ストレスが強く「肝の疎泄」を乱してしまいます。これらが原因で「肝気鬱結」を起こす事で、気の流れが悪くなり「お血」が生じたり、気分が沈んだりします。また、性器は肝に属しますので、痛みや勃起不全など性器にも異常が現れる場合もあります。
漢方薬:大柴胡湯 柴胡桂枝湯 柴胡疎肝散 四逆散 冠心逐オ丹
食養生:三つ葉、春菊などの香野菜 苦ウリ 柑橘類 ミント ハーブティーなど
④ 湿熱
何らかの原因で、湿(身体に不必要な水分)や身体に不要な熱が発生すると、これらは「湿熱」を発生させます。この湿熱が経絡(気血・津液など身体に必要な物が流れる道)を阻害して、気血の運行を悪くしてしまう事で、倦怠感や軟便・下痢、めまい等の症状が現れます。特に日頃から飲酒の多い方や食生活が悪い方に多く見られます。
漢方薬:温胆湯 龍胆瀉肝湯 瀉火利湿顆粒
食養生:あさり しじみ 大根 ゴボウ 人参 冬瓜 緑豆 こんにゃくなど